「手負いの壮絶なるLIVE」
やはり、長渕の肉体は限界を越えていた……
よりによって、全国160ヶ所とアジア各圏でも放映されるLIVEシネマのこの日。
スタッフやファンが今かと心待ちにする瞬間に向かうまさにその時、舞台裏では抜き差しならない緊迫した状況が張り詰めていようとは、知るよしもなかった……
遅れに遅れ……スタート予定の18時30分を回ること、50分以上!!!
異変を感じ始めた〜会場と映画館の観客の空気を切り裂くように、ようやく、お馴じみ〜イーグルスのテイクイットイージーのイントロが流れ、オープニングかと思いきや…マイクを持った見知らぬ現地プロモーターらしき男?がステージ上に立って、話し出した。
開演の遅れは、長渕の膝の状態が完治を成さない前のLIVEパフォーマンスで再び悪化して、LIVE自体が中止にせざるを得ない状況であると。
それでも長渕は今日、この日のステージには是が非でも立たなければならないと。
決行の開催宣言である!!!
被災地ゆえ〜長渕の思いも尽きないでのあろう。
そんなステージ上、バックメンバーに先導されるように、型押しレザーJKも羽織らず、白のタンクトップ姿の長渕が黒タカミネのアコギを片手に握りしめ〜足を引き吊りながら、ぎこちなくステージに歩を進める。
歩行すらままならない、見るからに手負いの痛々しい姿である。
スタンディングパフォーマンスはもう無理である。
「足が動かなくても声がある!足が動かなくても、かきむしるギターがある!足が動かなくても、お前たちを思う心がある!足が動かなくても、お前たちが俺を思う心がある!それで充分だ!いくぞー!いくぞー!いくぞー!」
と、絶叫−−−−っ!!!
自身に喝を入れているように思えてならない。
長渕自身が一番、この日にこのコンディションで臨まざるをえない状況に歯がゆいであろう。
椅子に腰掛けた長渕がオープニングの「日本に生まれた」を激しく奏で歌う。
観ている方がハラハラしてしまう(/_;)
以後の曲では、時折椅子から立ち上がってはぎこちなく演奏する。
もう、とうに左足は使い物にならない。飛び跳ね、走る、歩くどころか、動くのが精一杯であろう。
それでも、僕の長渕流ロック・ド真ん中ソング[success]では、完全スタンディングで歌いきり……そこからは、リミッターを振り切るかの如く、怒涛のたたみかけ!!!
思考を超越した本能の赴くままに突き進む。
とにかく、細かい事はとやかく言っても仕方ない。無事に終わる事が優先であろう。
ここで、取り返しのつかない事になったら…来月からのアリーナツアーにまで悪影響を及ぼしかねない。
そんな周りスタッフらの思惑とは裏腹に、長渕自身はレッドゾーンをとうに振り切っていた。
当初はこのファイナル公演用に、特別なセットリストを加えようとしていただろうが… この状況では、到底無理な話であったのだろう。
通常メニューのセットリストを全完奏しただけで充分であろう。
今夜は、とやかく細かい事はなしだろう。
あとは完治へ向け、リハビリに励んで〜少しでも万全に近い状態で、福岡初日のステージに立ってほしい。
その前に、9月3日の札幌もあるのだが……